「ブチャやウクライナで起こっていることを南京事件に比べてみる」

「ブチャやウクライナで起こっていることを南京事件に比べてみる」
10年以上前になりますけど
日本に「歴史修正主義」が流行りました。よく取り上げられたトピックに南京事件があり、小林よしのり氏の「ゴーマニズム宣言」などで盛んに「日本軍は規律正しい帝国軍であり、南京事件は中国の反日プロパガンダとして誇張ねつ造された」という主張がされました。つまり歴史の教科書なんかに書いてある「南京事件30万人大虐殺」なんかは戦勝国による「東京裁判」の結果であり、そもそも中立ではあり得ないこと、さらに中国に媚びた日教組なんかの反日思想によって刷り込まれたものだというのです。
それで私は南京事件を調べ始めたわけです。
調べてみると南京事件の評価には3種類あることがわかりました。
一つは元朝日新聞記者であった本多勝一氏の「中国の旅」に代表される中国側の立場です。本多氏は実際に南京を取材し、南京事件の生き残りの証言を書きました。日本軍による大量殺戮があり、民間人がたくさん殺されたことは事実と。この立場は中国側の発表通り30万人殺されたとします。
一方で南京に従軍し帰った日本軍帰還兵に対する調査で、そんな民間人に対する殺戮は聞いたことがないという証言集もありました。
この立場からは実際に論証できる日本軍の殺害行為は中国兵捕虜の逃亡を阻止する銃撃のみとします。これは4000人です。ここでは本多氏が取材した中国人は中国共産党の回し者であり、信憑性がないとします。
もう一つは当時南京にいた外国人の証言を重視する立場です。南京にはドイツ人やアメリカ人宣教師などがいて手記を書いています。
この中立の立場から推察される死亡者は11 万人です。アメリカ人宣教師の調査から導き出されました。
1.の立場では中国側の発表をそのまま受け入れ、2.の立場では現地証言はプロパガンダであり、信憑性がないとし、3.の立場では両方とも誇張と考えます。
当時は日本軍の侵攻により、中国軍が敗走して、多くが便衣兵という民間人を装った兵になっていたことや、その便衣兵を掃討するために戦闘に参加していない民間人が連行され殺されたこと。また当時の中国には国民党軍以外に軍閥があり、戦時の混乱に乗じた中国人自身による掠奪があったことも指摘されています。そのために中国側の発表による埋葬死者の中には日本軍によるものだけとは言えないと主張されています。
ミニーボーリトン宣教師の日記には、日本軍によるレイプや殺害があった、便衣兵捜索で連行され帰って来なかった人が多かった一方で、礼儀正しい規律を守る日本軍将校がいたこと、彼らが非難民に便宜を図ってくれたことも書いています。
このように戦争の極限状態においても規律を守り非難民を保護する兵、見えないところで暴行掠奪する兵、混乱に乗じて掠奪を行ったり、日頃排斥していた外国籍の人を迫害する民族主義者など、戦争の現場ではあらゆることが起こると考えた方がいいのです。
ロシアによる殺害
アゾフやネオナチによる殺害
どちらもあり得ます。
こういう時私たちに求められることは、どちらかの言い分だけで即断しない、戦時中の国が互いにプロパガンダ合戦する、場合には盧溝橋事件のような偽旗作戦(相手に罪をなすりつける自作自演)まであるということを念頭に置く必要があるのです。
すでにロシアも西側も情報統制に入っているのです。このようなことは戦争終わって数年の独立調査なしには判断できないのです。
私たちがマスコミに煽られ停戦を無効にするような感情的非難を繰り返すことは、むしろ戦争を煽り、武器商人たちの思惑通りにウクライナの惨状を長引かせるだけになるかもしれないのです。
そんな感情的な反応がロシアを追い詰めれば、ことはウクライナだけに止まることはありません。戦時中の国威発揚に酔いしれた大本営発表だけを信じ込んだ日本がどうなったのか思い出してください。あなたが第三次世界大戦を起こしたいなら別ですが。